2023.11.01 [イベントレポート]
小辻陽平監督、長編デビュー作『曖昧な楽園』 タイトルに“楽園”を用いた理由とは?
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11月18日からは劇場公開

第36回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された日本映画『曖昧な楽園』が10月31日、東京・丸の内ピカデリーで上映され、本作が長編デビュー作となった新鋭・小辻陽平監督が観客とのQ&Aに臨んだ。

身体が不自由になってきた母と二人暮らしの交通量調査員。植物状態の老人の世話をしている青年と幼なじみの女性。交わることのない2つの“生と死”をめぐる物語が、SF映画のような独特の雰囲気で映し出される167分のロードムービーだ。

長編デビュー作がいきなり、国際映画祭のコンペティション部門に出品され、小辻監督は「監督として、成長させていただいたと思いますし、夢のような時間を過ごさせてもらいました」と謝意。本作の着想は、認知症と筋ジストロフィーを患った亡き祖父と過ごした「無為な時間」だといい、「その名付けようのない時間が、自分の中に残っていた。曖昧であり、漠然とした、意味にもならない瞬間、時間を撮影したいという思いがありました」と明かした。

タイトルに“楽園”という言葉を用いた理由を問われると、「くだらない理由で、申し訳ないんですけど」と前置きし、「楽園とかパラダイスの付く映画が大好きで、そういう映画への憧れからです」と説明。具体例として『パラダイスの夕暮れ』『ニュー・シネマ・パラダイス』『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『憂鬱な楽園』を挙げた。

Q&Aには、小辻監督をはじめ、出演者のリー正敏、内藤春、トムキラン、高橋信二朗、竹下かおりが同席。脚本づくりや演出において、即興を重視し、監督と俳優たちが対話を重ねながら作り上げたといい、リーは「台本はセリフが少ないですが、情景やその場の空気みたいなものが、すでに練られていた。そこからキャラクターの呼吸や居姿を受け取れたので、即興に困ることはなかった」と振り返った。

また、内藤は「最初、セリフはほとんどなくて、本当に結構長い時間、キャラクターのバックボーンや骨組みを監督と話し合った。本番では、ある意味、まっさらな気持ちで挑み、感覚的に芝居をしていた」と話していた。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。『曖昧な楽園』は、11月18日からポレポレ東中野で公開される。
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