2023.11.01 [イベントレポート]
『リンダはチキンがたべたい!』を上映作品に選んだ理由 独自の作画手法と“温かい気持ちになれる”物語
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第36回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月31日、『リンダはチキンがたべたい!』が上映され、会場の角川シネマ有楽町でプログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏が作品解説のトークを行った。

同作は、「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」のセバスチャン・ローデンバックとキアラ・マルタが脚本・監督を手がけた73分の作品。8歳のリンダは、かつて一緒に暮らしていた父がつくってくれたチキン料理を食べたいと懇願する。街じゅうがストライキでどの店も閉まっているなか、母のポレットは思い出のチキンの味を再現しようと奮闘する。日本では2024年に全国公開される。

今年の「アヌシー国際アニメーション映画祭」の長編部門で最高賞にあたるクリスタル賞を受賞した同作について、藤津氏は共同で監督を手がけたフランス生まれのローデンバック氏と、イタリア生まれのマルタ氏のプロフィールと作品歴を紹介した。

ローデンバック氏のアニメ作家としての背景として、友人らとつくった「ウアニポ」というグループの存在があることを藤津氏は指摘し、「アニメーションの潜在的な能力を引き出す」という意味がこめられ、“ある種の制約をもうけて表現を開拓する”ことを試みているグループだと説明。ウアニポから生まれた「クリプトキノグラフィ」という作画手法は、ローデンバック氏の前作『手をなくした少女』で使われ、本作でも受け継がれている。

クリプトキノグラフィは“運動の暗号化”という意味の造語。キャラクターが動くときに、すべての線ではなくポイントとなる一部の線だけを描くことで、動きのなかで線が浮かびあがってくるような独特のアニメーション表現がなされている。藤津氏は、「止まった絵で見れば絵画にしかみえないが、動きが加わることで線が浮かびあがり、そこから人間の存在感というものが浮かびあがってくる」と話し、そうしたアニメーションならではの表現の面白さが、本作をアニメーション部門の上映作品に選んだ理由のひとつだと語った。

同作では、チキンを介した8歳のリンダと母ポレットの絆の連鎖が人々を結びつけ、お祭りのような盛りあがりをみせていく。そうした人間模様をユーモアでつつんで描き、“見ると温かい気持ちになれる”ところが、『リンダはチキンがたべたい!』の物語面での魅力だとも語られた。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
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