2023.10.31 [イベントレポート]
リー・ルイジュン監督×井口奈己監督、“生誕120周年”小津安二郎監督『小早川家の秋』の魅力を語る
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第36回東京国際映画祭が開催中の東京・角川シネマ有楽町で10月31日、小津安二郎生誕120年を記念する特別企画「小津安二郎生誕120年記念シンポジウム“SHOULDERS OF GIANTS”」が行われ、小津監督が宝塚映画に出向して撮った『小早川家の秋 4Kデジタルリマスター版』が上映された。

上映後には、「Nippon Cinema Now」部門で『左手に気をつけろ』が上映される井口奈己監督、『小さき麦の花』が第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品されたリー・ルイジュン監督がトークイベントに出席。伏見で造り酒屋を営む一家の人間ドラマで、小津組常連に加えて、東宝の主役級と豪華なキャストが揃った本作の魅力を語った。

松竹を代表する巨匠である小津監督が、東宝で映画を撮るにあたり、スタッフもほぼ総入れ替えとなっており、ルイジュン監督は「カメラワークが珍しいですし、色使いも全体的に抑え気味になっていて、空の色も松竹作品とはまるで違う」と分析。「笠智衆さんの扱いが小さくなっているのも特徴だと思います」と語った。

井口監督も「やはり、美術がずいぶん違うような気がします」と指摘し、「小津安二郎監督の作品は、「そんな場所にやかんは置かないだろう」ということがあるんですが、この作品はそういうことがない。松竹だと障子ですが、この作品はガラスに竹ひごだったり。そういう印象の違いがある」と話していた。

さらに「いつ見ても気になること」として、「番頭さんが左手に包帯を巻いた上に、腕時計をしているんですけど、3回目の登場で包帯がなくなっている。誰か理由をご存じの方がいれば……」と思いをめぐらせた。

お気に入りの小津作品については、リー監督が『東京物語』(1953)、井口監督が『麦秋』(1951)を挙げた。リー監督は「カメラを俳優の真ん前に置くことで、役者が観客に話しかけているように見える。スクリーンに閉じ込められた俳優、劇場に閉じ込められた観客の境目を消す独特な撮り方」と技法の革新性を絶賛。また、自身の次回作は「出稼ぎに出た親と子どもが数年後に再会し、感情に変化が起こるという物語。まさに『東京物語』なのです」と構想を明かし、小津作品の普遍性に言及した。

井口監督は「原節子が嫁に行く、行かないという話。それでも、ストーリーを伝えるだけではなく、シーンやディテールを重ねることで面白みが増し、そこにこそ映画を見る喜びがある」と小津作品ならではの魅力を語った。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
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