10/26(木) コンペティション『ロングショット』上映後にガオ・ポン監督(監督/脚本)、マチュー・ラクローさん(編集)をお迎えし、Q&Aが行われました。
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安田佑子アナウンサー(以下、安田アナ):それでは、お二人には一言ずつご挨拶をいただきたいと思います。では、監督からお願いします。
ガオ・ポン監督(以下、監督):みなさん、こんにちは。ご覧いただきましてありがとうございます。監督のガオ・ポンです。この作品は私の長編第一作であり、自身の初訪日となるので、とても意義深いです。
安田アナ:それではマチューさんからも、ひと言お願いします。
マチュー・ラクローさん(以下、マチューさん):編集を担当しました、マチューです。
ガオ・ポン監督と今回仕事をできたことを非常に嬉しく思います。そしてまた、東京国際映画祭のコンペティションに選ばれまして、本当に光栄に思います。
監督:少し捕捉させていただきたいのですが、実は、いまみなさんにご覧いただいたバージョン最終バージョンではございません。音声の面で問題があり、音楽も最終的なものではありません。極力間に合わせようと努力はしたのですが期限に間に合わず、結局、このバージョンをご覧いただくことになってしまいました。すべては監督である私の責任ですので、ここでみなさんにお詫び申し上げます。
安田アナ:監督の悔しい気持ちがすごく伝わってきます。逆を言えば、このバージョンを見たということはすごくレアですよ。ですから、日本で公開にされた時はさらにバージョンアップしたものを見られると思って、皆さん楽しみにしていてください。では私からまず質問をしたいと思います。非常に面白く最後の緊迫した銃撃戦も最高でしたが、長編第一作でこのテーマを取り上げたのは、どうしてでしょうか。
監督:これは1990年代を背景としており、90年代の変化というのは本当に劇的なものでした。その時代に生きていた人たち、その思い出はこの劇的な変化と切り離して考えることはできないわけですね。実はぼく個人は、非常にアスリートという人たちの生き方にとても興味がありました。特にこの時代のアスリートたちは、本当に幼い7、8歳とか10歳くらいの子供たちが、いろんなところから選抜されて、訓練を受けて、そして、国のためにチャンピオンになろうという目標をもって生きていました。
個人的にその生き方にとても興味をもちました。
安田アナ:マチューさんにも編集作業についてお話をうかがいます。普段、監督は北京にお住まいで、マチューさんは台北に住んでいらっしゃるそうです。お仕事はどうやって進めていったのでしょうか。作業はスムーズだったのでしょうか、それとも、いろいろ議論しながら進めていったのでしょうか。
マチューさん:私は、たまにガオ・ポン監督と会ったりしましたが、かなりリモートでやることが多かったんですね。私にはコ・エディターがいまして、一緒に画面を見てオンラインでイメージをみたり、話をしたりして、実際に会っているのと同じような形で進めていきました。
Q:アスリートに関心があったとおっしゃっていますが、モデルがあったのでしょうか。この作品は鉄工所の実際にあった事件を下敷きにして、アスリートを主人公にもってきて描いたのでしょうか。あるいは、まったく架空の、監督が頭の中で作られたのでしょうか。
監督:まず、いまご質問いただいた方に心から感謝したいと思います。観ていただいて感想をいただいて心から感謝します。この作品が完成できたのは、いろんなすぐれた役者さん、そしてチームのみなさんに恵まれたからです。いま隣におられるマチューさんは編集ですけれども、ほかにも、共同脚本の方がそこ(観客席)に座っています。この物語は完全にオリジナル脚本ですので、何か実際に起こった事件をもとにして書いたようなものではないのです。先ほど申し上げましたように運動が好きだったので、とにかくアスリートになりたいと思っていたのですが、なかなか天賦の才能に恵まれなくて、アスリートにはなれませんでした。ですが、そういう人たちがどういう気持ちなのかなということに自分は興味をもちました。
Q:映画の描き方や演出について、どのような海外の監督や作品に影響を受けられたのかをお伺いしたいと思います。
監督:もちろんほかの国の監督もたくさん好きな監督はいますけれども、日本の監督で言えば、北野武監督とか、山田洋次監督の作品も大好きです。
Q:自分の人生とこの映画の中の人物たちの人生をどういう風に結び付けて描いたのでしょうか?
監督:私は中国の東北部の出身ではないですが、あの時代、この映画に描かれた時代の中で、いろんな人たちがいろんな経験をしてきたことを、家族の中でも聞いたことはあります。私はもうすぐ40歳になりますが、やはり人生というのは簡単にうまくはいきません。いつも目標はもって生きていますけれど、それは実現できるかどうかはわからないです。けれども、やはり一生懸命頑張って歩いていきたいという気持ちは、この映画の中に盛り込みました。
Q:最近、中国の吉林省あたりの東北の物語を描いた映画は、非常にバイオレンスを強調したものが多く、セリフもそういうものが多いです。この映画はさほどではなかったと思います。監督はこの映画を撮るときには、脚本段階でもわざとそういうことを避けられたのでしょうか?
監督:極端にバイオレンスの部分を強調しなかったというのは、主役のグー・シュエピンという人物のキャラクターと非常に関係があります。
彼は最後に射撃選手として自分の射撃の技を見せます。観客には、彼の心の動きをしっかりと観てほしかったので、自然とバイオレンスの部分は強調しないように描いています。