2023.10.29 [イベントレポート]
城定秀夫監督、さとうほなみと『愛なのに』撮影を述懐 今泉力哉監督との意外な接点も
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城定秀夫監督とさとうなほみ

第36回東京国際映画祭のNippon Cinema Now部門の監督特集「映画の職人 城定秀夫という稀有な才能」で10月29日、『愛なのに』のトークセッションが角川シネマ有楽町で行われ、城定監督と出演したさとうほなみが出席した。

 本作は、『愛がなんだ』『街の上で』の今泉力哉が脚本を務め、瀬戸康史演じる古本屋の店主・多田を主人公に、一方通行の恋愛が交差するさまを描いたラブコメディ。さとうは多田の忘れられない存在の女性、一花を演じた。城定監督は「公開からだいぶ経つんですが、愛される作品になった。こうやって今でも満席の劇場でかけていただけて本当にうれしく思っています」と喜びを語った。さとうは「城定監督の特集、おめでとうございます。すごい!」と祝福。会場からも拍手が上がっていた。

今泉監督とのコラボレーション企画として製作された本作だが、城定監督は「プロデューサーさんからの提案で、「今泉さんと城定さんの脚本をひっくり返してやる企画を考えている」と言われて。今泉さんというのは、ものすごく人気のある監督じゃないですか。僕はまだ『アルプススタンドのはしの方』の撮影をやっている頃だったので、誰も知らないみたいな状態で」とぶっちゃけて、会場も爆笑。「その格差が恥ずかしいなと思いつつ、「今泉さんがいいと言ってくれるなら、もちろん喜んでやります」と言った」と成り立ちを説明した。

今泉監督とは面識があったそうで、「昔から今泉さんは僕を先輩扱いしてくれて。あと、子どもの保育園が一緒」と意外な縁を明かし、さとうを「そうなんだ!」と笑わせていた。さとうは「一花は猪突猛進でかわいらしいなと思って、ぜひやらせていただきたいと思った」と役柄に愛情を傾けながら、「おとなしめの女の子なので、監督とは、どういうアプローチをしていこうかなとお話させてもらった。「いいよ、いいよ。まんまで」と言ってくれた」と笑顔を見せていた。

城定監督によると「作家性を信じます」という企画で、好きにやってくださいという要望が強かった」そうで、自分の自然なスタイルに近い映画を完成させることができたという。撮影時の印象的なエピソードに話が及ぶと、さとうは「絡みのシーンは、助監督さんと監督がご本人たちで見せてくれた。ベッドの上で二人で絡み合っていましたね。助監督さんはパンツ一丁だった」と楽しそうに述懐。城定監督は「カメラマンも濡れ場を撮るのが初めてだったので、ちょっとやってみようかと。昔は若い頃、よくそういうことをやっていたんです」と明かした。

同映画祭で特集が組まれた城定監督だが、どのような作品でも「俳優に求めることはあるか?」という質問が観客から上がると、「僕は役者に頼り切りの監督なので」と切り出し、「僕以上に役について考えてきてほしいというのは、常々思っていますね。監督が答えを持っていると思ってほしくないというか、その人が作ってきた人間を見せてくれというような感じです」と説く。一方のさとうも「お芝居には相手がいるものなので、その役柄の背景などは台本に沿って考えていった上で、あまり決め打ちしていくのは怖いなと思っています。その場で生まれたものは大切にしたいなと心がけています」と相手を信頼しながら、撮影に臨んでいると話した。

今回の特集で上映されたのは、『愛なのに』『ビリーバーズ』『銀平町シネマブルース』『アルプススタンドのはしの方』の4本。城定監督は「この4本は、脚本も一緒に誰かと書いてもらっているものでも、自分で調整もしていますし、監督、脚本、編集に全部関わっているのがこの4本なんです」と話す。「撮影の時になるべく無駄のないカット割りでやるとか、ちょっと編集のことを考えて撮影したり。ここはワンカットでやりたいから、脚本の段階でこういう動きにしようと考えたり。そうやって分業せずに、自分の中だけでやっているという感じ。これくらいのサイズの映画だと、そうしないと出ないような味わいがあるんですね。自分の中で全部調整ができるという、強みはある。そこを最大限に活かしていければなと思ってやっています」と語った。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催される。
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