2023.10.29 [イベントレポート]
秘密裡に撮影された『タタミ』、プロデューサーが語る波乱の道程「できたことが幸せ」
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プロデューサーで出演もしているジェイミー・レイ・ニューマン

第36回東京国際映画祭のコンペティション部門で、ザル・アミール、ガイ・ナッティブの共同監督による『タタミ』が10月29日、丸の内TOEI1で上映され、プロデューサーで出演もしているジェイミー・レイ・ニューマンがQ&Aを行った。

柔道の世界選手権に出場したイラン代表の女子選手が、勝ち進むとイスラエル代表選手と当たる可能性があるため、イラン政府から負傷を装って棄権しろとの命令を受け葛藤しながらも試合に出場し続ける姿を描く。アミール監督はイラン出身でフランス在住、ニューマンの夫でもあるナッティブ監督はイスラエル出身で米国在住という「映画の歴史上、この両国のタッグは初めて。奇跡的なプロジェクト」(ニューマン)だという。

撮影はジョージアで米国、イスラエル大使館などの協力を得て秘密裡に行われた。「タイトルや俳優の名前は全て暗号化され、特にザルは身に危険が及ぶ可能性があるので徹底的に秘匿状態で行われた」と明かした。

2019年の世界選手権で同様の命令を受けたイラン選手が大会中に亡命した出来事をヒントに、ナッティブ監督が脚本の執筆を開始。22年9月、マサ・アミニさんがテヘランでヘジャブの着け方が不適切だったことを理由に道徳警察に拘束され、後に死亡する事件が起こり、「違う方向に転換し、女性の権利の話にシフトしていった」と説明した。

22年『聖地には蜘蛛が巣を張る』でカンヌ国際映画祭の最優秀女優賞を受賞したアミール監督は、もともと主人公のコーチ役でキャスティングされた。「ガイが、「(亡命を)経験した人の声が必要だ」ということで、ザルに関わってもらった。どの部分を切り取っても、彼女の協力の下で成り立っている。不可欠な存在だった」と感謝した。

試合前の音楽には和太鼓が使われるなど、柔道大国・日本へのリスペクトも。「和太鼓を使うことは脚本の段階からあったのよ。日本へのオマージュはたくさん使われている。なぜ柔道にしたかということも、美しく互いへの尊重が表れているスポーツだから」と語った。

当然、イランでの上映は許可されていない。ニューマンはそれでも、「世界は刻々と変わっていて、この映画を撮影していた昨年と今も全然違う。とにかく今は、この映画ができたことに幸せを感じている。個人的でニッチだが、より普遍的な映画でもあるので世界中に語りかけてほしい。日本の配給会社の方が興味を持ってくれることを願っているわ」と期待を寄せた。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催される。
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