声の出演をしたワン・ホンウェイ(左)とヤン・チェンプロデューサー
第36回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月26日、『
アートカレッジ 1994』が上映され、会場の東京・TOHOシネマズシャンテでプロデューサーのヤン・チェンと俳優のワン・ホンウェイが登壇。プログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏とトークを行った。
同作は、リウ・ジエンが監督を務めた中国の長編アニメ。中国社会が大きく変化する1990年代初頭を舞台に、美術大学に通う学生たちの姿を描く。
ヤン氏は、リウ監督が学校の仕事で映画祭に来られなかったことを詫びながら、「これまで東京国際映画祭には実写の2作品で参加しました。今回アニメで参加することができて新鮮です。日本の観客は映画を静かに熱心に見てくれているという印象があり、とてもうれしく思います」と挨拶。同作の後半に登場するフー・ティヤアンミン役として声の出演をしたワン・ホンウェイも、「初めて声優をやりました。自分の顔が映らなくてすみました」と冗談めかして自己紹介した。
リウ監督と旧知の仲であるヤン氏は、犯罪をテーマにしたリウ監督の前作『ハブ ア ナイス デイ』から、今作では1990年代の美術大学を舞台にしたことについて、「リウ監督には、過去への回帰があったように思います。実際に学校で若い人を教えているリウ監督は、当時の“複雑だった時代”のことを思いだし、新しい芸術のことをスクリーンで表現したかったのかもしれません。私自身、映画を見て当時のことを思い出しました」と説明した。
本作では、ワンをはじめとする映画俳優、ロックスター、作家、司会者、若い映画監督といった、専業の声優でない人たちが声を担当している。これはヤン氏からの提案だったという。
「本作は個性的なキャラクターが多く、芸術、恋愛、自由など、さまざまなものに対してこだわったり迷ったりしています。そうしたキャラクターに声をあてるのは、違うジャンルの芸術家がいいのではないかと思いました。声の質感や芝居をもとにリウ監督がキャスティングし、皆さん思った以上によくやってくれて、うれしい驚きがありました。全体的に非常に満足しています」
声優陣のなかには、ワンが実写映画で俳優と監督としてタッグを組んでいるジャ・ジャンクー監督(『長江哀歌』『罪の手ざわり』)もいる。藤津氏が、ジャ・ジャンクー監督の声優としての演技についてワンに訊ねると、「僕よりも上手だと思います」と笑いながら答えていた。
藤津氏から実写映画で描いてもよさそうなリアリスティックな題材をアニメーションで描く意義について聞かれると、ヤン氏は「いい質問で、観客の皆さんにお話したいと思っていた」と話しながら、「アニメーションは“ひとつの言語”だと思っています」と切り出す。
「本作はかわいかったり、ヒーローが登場する一般的なアニメーションとは違うストーリー展開がなされています。そうした物語をどの“言語”で表現すべきか、その必要性はどこにあるのか、作品をつくる前に必ず考えられなければいけません。本作についてはアニメーションでやる必要性があったことが、独特な絵のタッチや光の当て具合などから分かっていただけると思います。実写では、このような効果は得られなかったはずです。
さらに言うと、このアニメーションは必ず手描きのアニメーションでなければなりませんでした。3DCGなどでやっていたら、思うような効果は出なかったと思います。ただ、もしアニメーションの表現が苦手だったり、慣れない観客の方には、そのことに縛られることはないとも思っています」
声優として出演したワンも、「俳優として、本作はいい方法をとったと感じていますし、新しいものがつくれたと思っています。若い人たちの生活を描くさい、実写で撮っていたら、本作で描かれたようなユーモアやペーソスの効果はでなかったと思います」と話していた。
『
アートカレッジ 1994』は、10月31日にヒューマントラストシネマ有楽町で再上映される(トークはなし)。第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
声の出演をしたワン・ホンウェイ(左)とヤン・チェンプロデューサー
第36回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月26日、『
アートカレッジ 1994』が上映され、会場の東京・TOHOシネマズシャンテでプロデューサーのヤン・チェンと俳優のワン・ホンウェイが登壇。プログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏とトークを行った。
同作は、リウ・ジエンが監督を務めた中国の長編アニメ。中国社会が大きく変化する1990年代初頭を舞台に、美術大学に通う学生たちの姿を描く。
ヤン氏は、リウ監督が学校の仕事で映画祭に来られなかったことを詫びながら、「これまで東京国際映画祭には実写の2作品で参加しました。今回アニメで参加することができて新鮮です。日本の観客は映画を静かに熱心に見てくれているという印象があり、とてもうれしく思います」と挨拶。同作の後半に登場するフー・ティヤアンミン役として声の出演をしたワン・ホンウェイも、「初めて声優をやりました。自分の顔が映らなくてすみました」と冗談めかして自己紹介した。
リウ監督と旧知の仲であるヤン氏は、犯罪をテーマにしたリウ監督の前作『ハブ ア ナイス デイ』から、今作では1990年代の美術大学を舞台にしたことについて、「リウ監督には、過去への回帰があったように思います。実際に学校で若い人を教えているリウ監督は、当時の“複雑だった時代”のことを思いだし、新しい芸術のことをスクリーンで表現したかったのかもしれません。私自身、映画を見て当時のことを思い出しました」と説明した。
本作では、ワンをはじめとする映画俳優、ロックスター、作家、司会者、若い映画監督といった、専業の声優でない人たちが声を担当している。これはヤン氏からの提案だったという。
「本作は個性的なキャラクターが多く、芸術、恋愛、自由など、さまざまなものに対してこだわったり迷ったりしています。そうしたキャラクターに声をあてるのは、違うジャンルの芸術家がいいのではないかと思いました。声の質感や芝居をもとにリウ監督がキャスティングし、皆さん思った以上によくやってくれて、うれしい驚きがありました。全体的に非常に満足しています」
声優陣のなかには、ワンが実写映画で俳優と監督としてタッグを組んでいるジャ・ジャンクー監督(『長江哀歌』『罪の手ざわり』)もいる。藤津氏が、ジャ・ジャンクー監督の声優としての演技についてワンに訊ねると、「僕よりも上手だと思います」と笑いながら答えていた。
藤津氏から実写映画で描いてもよさそうなリアリスティックな題材をアニメーションで描く意義について聞かれると、ヤン氏は「いい質問で、観客の皆さんにお話したいと思っていた」と話しながら、「アニメーションは“ひとつの言語”だと思っています」と切り出す。
「本作はかわいかったり、ヒーローが登場する一般的なアニメーションとは違うストーリー展開がなされています。そうした物語をどの“言語”で表現すべきか、その必要性はどこにあるのか、作品をつくる前に必ず考えられなければいけません。本作についてはアニメーションでやる必要性があったことが、独特な絵のタッチや光の当て具合などから分かっていただけると思います。実写では、このような効果は得られなかったはずです。
さらに言うと、このアニメーションは必ず手描きのアニメーションでなければなりませんでした。3DCGなどでやっていたら、思うような効果は出なかったと思います。ただ、もしアニメーションの表現が苦手だったり、慣れない観客の方には、そのことに縛られることはないとも思っています」
声優として出演したワンも、「俳優として、本作はいい方法をとったと感じていますし、新しいものがつくれたと思っています。若い人たちの生活を描くさい、実写で撮っていたら、本作で描かれたようなユーモアやペーソスの効果はでなかったと思います」と話していた。
『
アートカレッジ 1994』は、10月31日にヒューマントラストシネマ有楽町で再上映される(トークはなし)。第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。