2023.10.26 [イベントレポート]
「はじめはクズという役柄をお願いすることへの迷いがありました」10/24(火) 舞台挨拶:TIFFシリーズ『連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~ 第一話 出来ごころ 第二話 生れてはみたけれど』

小津安二郎が描いた物語

©2023 TIFF

 
10/24(火)TIFFシリーズ『連続ドラマW OZU~小津安二郎が描いた物語~ 第一話 出来ごころ、第二話 生まれてはみたけれど』上映前に、城定秀夫監督田中圭さん(俳優)をお迎えし、舞台挨拶が行われました。
⇒作品詳細
 
司会:宮脇美咲(WOWOWアナウンサー)(以下、宮脇アナ):本日、司会を担当いたします、WOWOWアナウンサーの宮脇美咲と申します。よろしくお願いいたします。
ゲストのお二方をお呼びいたします。主演の田中圭さん、監督の城定秀夫さんです。温かい拍手でお迎えください。まずは田中さんにご挨拶をお願いできればと思います。

 
田中圭さん(以下、田中さん):皆様、本日はありがとうございます。田中圭です。小津安二郎さんの作品を、城定監督と一緒にリメイクすることができて幸せです。今日は楽しんでいってください。
 
城定秀夫監督(以下、城定監督):この作品はテレビで放送する作品として作られましたが、大きな劇場で上映される映画のように制作してほしいと言われたので、このような大きな会場で皆さんにお披露目する日を迎えることができてうれしく思っております。今日は楽しんでいってください。よろしくお願いします。
 
宮脇アナ:ありがとうございます。まずは城定監督に質問させていただきます。本作は日本を代表する映画監督、小津安二郎の90年前に公開されたサイレント映画『出来ごころ』のリメイクということで制作されました。今回、監督と脚本を担当されましたが、世界の小津作品をリメイクするにあたり、どのような点を意識したのでしょうか。
 
城定監督:そうですね。小津作品がどのような作品かということは、役者は全員、もちろん理解しているし、スタッフも含めた皆が、なんとなく分かっています。そうした中で、この作品に関しては、意外にも、小津作品らしさが薄いというか、みんなが連想する小津さんとはまた少し異なる、若き日の小津安二郎作品なんです。そのようなところで、小津らしさのようなものを真似しようとすると、逆に自分らしさも出ないしやる意味がないと感じたので、あまり小津さんのリメイクということを意識しないように意識した、という感じです。
 
宮脇アナ:そして、田中さん扮する主人公の喜八は、妻と別れ、息子の富夫とふたり暮らしをしていますが、酒や博打に夢中な父親という役ですが、実際に父親役を演じられて、いかがでしたか?
 
田中さん:喜八というキャラクターが、憎めないクズという感じなんですよね。なぜかは分からない、体感的なものではありますが、憎めないクズの役ならばできなくもないな、という感覚を持ちました。ただし、やはり原作を観ることで当然ながらプレッシャーも感じました。また、監督が城定監督ということもあり、富坊との関係性を一番重視しようと思い、撮影現場でも常にコミュニケーションを取るよう、意識していました。(富坊役の)優理斗くんがとてもかわいく、本当に素敵な俳優さんだったので、撮影が始まってからは、クズに徹することにしました。
 
宮脇アナ:田中さんが演じられたお父さんを私も拝見しましたが、ただのクズだとは思えず、息子との関係性を非常に強く感じました。皆さんにも、大きなスクリーンで感じていただけたら嬉しいと個人的には思っております。
 
田中さん:そうですね、はい。
 
宮脇アナ:そして、城定監督と田中さんは昨年の2022年に公開された映画『女子高生に殺されたい』でも、監督と主演としてタッグを組まれました。今回再びタッグを組んだということですが、城定監督は、改めてご一緒していかがでしたか?
 
城定監督:基本的に、監督がキャスティングに口を出すことは殆どありません。大体、仕事の依頼を受け、話を伺った時には、既に主演が決まっていたり、殆ど上層部で決めたりする事が多いですが、今回の企画では、一緒に作品をつくりたい俳優はいないかと意見を求められたので、本当に色々な候補を考えました。そこで田中さんのお名前も挙がりましたが、はじめはクズという役柄をお願いすることへの迷いがありました。そのような時、深夜にTVドラマ「死神さん」の再放送を見て、その作品の中にいた、イメージと異なる田中さんの姿に、このようなキャラクターも演じられるのかと思い、その勢いでWOWOWと松竹に、田中圭さんはどうかと提案し、実現しました。
 
宮脇アナ:田中さん、今のお話を伺って、お気持ちはいかがでしょうか。
 
田中さん:一度、映画でご一緒した際に城定監督のことが大好きになり、また一緒に作品をつくりたいと本当に思っていました。そんなある日、「城定さんから圭を主演にした作品制作の依頼が来ている」と聞きました。「本当なのか、そんなことが起こるのか」と口にしながらも、二つ返事で「もちろんやります、やったー!」と言うほどでした。まさか儀藤(「死神さん」で田中さんが演じた役名)がこの作品へのキャスティングを繋いでくれていたとは思わず、やはりいろいろな作品で役を演じるものだなと、今少し興奮しています。
 
宮脇アナ:今回再タッグを組んだお二方ですが、実際に撮影してみて印象的なエピソードがあれば、ぜひ教えていただきたいです。城定監督は、何かございますでしょうか?
 
城定監督:言えないことも色々とありますが(笑)。いつも以上に、とてもスムーズな現場でした。松竹・WOWOWのスペシャルドラマということもあり、今作のキャストには、今まで自分の作品に出演してくれた方が多かったり、スタッフやカメラマンも、普段から自分の現場にいてくれているカメラマンだったりとか、日頃から馴染みのあるスタッフでチームを作ってくれていたので、とてもやりやすい現場だったことに加えて、役者さん同士の息もピッタリで、手間のかからない現場だった印象です。
 
田中さん:僕からも質問していいですか?城定監督に聞きたいことがあります。城定監督の撮るワンカットは、心がくすぐられて、もっと見たくなるのでとても好きなんですね。今回の作品にもわかりやすいクライマックスがあり、そのシーンを撮影する日には、役者として、「今日は一日気合入れなきゃいけないな」とか「大変だな」とか「撮影に時間がかかるな」と思いながら現場へ行くのですが、現場で監督とお会いした時に、「田中さん、ここ(クライマックスのシーン)ワンカットで撮影します」と言われたんです。その時に、「このシーンを撮影するのに、ワンカットを選ぶの?」ととても驚いたのですが、あれはいつ考えついたんですか?
 
城定監督:ロケハンの時などで考えました。あの(クライマックスの)シーンは、何日か撮影していく中で、それまでに撮影してきた素材のことも踏まえて、ここはワンカットで撮影しようと思いました。ただ、これに関しては、たしかに提案した時に少し驚かれるかなと思いましたが、田中さんは全然驚いていなかったです。田中さんはいつもそうですよね、ああそうですか、わかりました、という落ち着いた感じです。
 
※会場に笑いが起こる
 
田中さん:驚いてます!驚きました。ワンカットで撮影しようと決めた後に、撮影が大変だったりするなかで、ワンカットにしなきゃ良かったなと思うことはないんですか?
 
城定監督:それはあまりないですね。基本的にカットは長いほうが好きなんで。
 
田中さん:皆さんも観たらすぐにわかると思うので、ワンカットのシーンを楽しみにしていてください。
 
宮脇アナ:最後に、みなさまにメッセージをお願いいたします。
 
田中さん:皆さま、本日は改めてありがとうございました。原作は、小津さんの90年前のサイレント映画ですが、現代なのかいつなのか分からない時代に落とし込んだことで、新しい作品が生まれたのが今回のリメイクだと思っています。本日は2作品を上映しますが、全6作品で小津さんの世界を描いております。まずは、今日の鑑賞を楽しんでいただきたいですし、また次の上映も楽しめて、観てよかったと思える作品です。2本とも楽しんでいってください。ありがとうございました。
 
城定監督:僕自身はまだ他の監督の作品を観ていないのでそれを楽しみにしています。そして今日上映する作品のうち、2本目は 皆さんと一緒に観ようと思っています。全6作品ありますが、各々作品のテイストも異なると思います。また、観る方の中には、この頃の小津さんを知らない方もいると思いますが、とても瑞々しく、若々しい作品です。僕なんかは、かなり老獪になりましたが、若い人がたくさん監督を務めており、とても面白い企画だと思いますので、ぜひ他の作品も観てください。まずは、今日これからの上映を楽しんでください。よろしくお願いします。

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