2023.10.26 [イベントレポート]
パペットアニメーションは“魔法に満ちている存在” 『トニーとシェリーと魔法の光』監督が明かした体が輝く少年を主人公にした理由
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フィリップ・ポシバチュ監督

第36回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月25日、『トニーとシェリーと魔法の光』が上映され、会場の東京・TOHOシネマズシャンテでフィリップ・ポシバチュ監督がプログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏とトークを行った。

同作は、チェコ・スロバキア・ハンガリーの合作によるストップモーションアニメ。体が輝く特殊な体質をもつ11歳の少年トニーは、風変わりな少女シェリーと、2人が住むアパートにあらわれる闇の塊の秘密を探ろうとする。

体が輝く少年を主人公にしたユニークな物語は、ポシバチュ監督が「弟の物語にしよう」と考えたのがきっかけだった。監督の弟は、明るい髪のせいで小さい頃に学校でいじめられ、自分を受け入れられずに悩んでいたという。

「髪の毛の色で自分が認められないのは馬鹿げたことだと思いますが、子どもの世界、あるいは大人の世界でも、ささいなことで分断がおこるのはよくあること。そうしたことはきちんと話し合い、お互いを尊重し合うことが大事です。この強いテーマをアニメーションにしようと思いました」

本作をパペットアニメーションにした理由を藤津氏から聞かれるとポシバチュ監督は、「パペットアニメーションは私にとって“魔法に満ちている存在”です。どれも独創的で、パッとみたときにはそれが玩具なのか芸術的なものなのか分からないのですが、見ているうちに内なるドラマ性が伝わってきます。私はパペットアニメが大好きです」と答え、プラハの大学時代にパペットアニメーションやストップアニメーションに触れて没頭した思い出を語っていた。

同作の脚本は12回の改稿を重ね、いっさいの制限なしで自由に脚本家に書いてもらった初期の脚本は5時間を超えるものだったという。ポシバチュ監督は、「自由があるのは素敵で素晴らしい」と話しながらも、「自分のためだけにつくるものではなく、観客に関心をもってもらう必要がある」と考え、子どもやその親たちとディスカッションして、この物語が分かってもらえるか確認しながら“観客に最適な脚本”にまとめていったのだそうだ。

ポシバチュ監督は最後の挨拶で、「来日は光栄なことで、自分にとって大きな出来事だった」と東京国際映画祭に招待されたことに感謝の言葉を述べていた。『トニーとシェリーと魔法の光』は、11月1日にヒューマントラストシネマ有楽町で再上映される(トークはなし)。第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
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