2023.10.25 [イベントレポート]
塚本晋也監督「世の中きな臭くなっている」『ほかげ』が第36回東京国際映画祭でアジアン・プレミア
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塚本晋也監督にとって8年ぶりの東京国際映画祭

第36回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門に出品されている『ほかげ』が10月25日、同映画祭のメイン会場のひとつである東京・TOHOシネマズ日比谷でアジアン・プレミア上映され、塚本晋也監督、出演者の塚尾桜雅と河野宏紀が舞台挨拶に立った。

終戦直後の闇市を舞台に、絶望と闇を抱えながら生きる人々の姿を描いたドラマ。体を売ることを斡旋され、絶望から抗うこともできずに日々をやり過ごしていた女が、空襲で家族を失った子どもと出会い、交流を通してほのかな光を見いだしていく。主演は、現在放送中のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」のヒロインを演じる趣里。森山未來が右腕の動かない謎の男を演じている。

脚本・撮影・編集も手がけた塚本監督は「闇市というものに、不思議と惹かれていた」といい、『野火』『斬、』の系譜を継ぐ戦争映画の製作に「どうも、世の中きな臭くなっている危機があり、終戦後の人たちに残された影響を今描かなければと思った。この作品は祈りの映画。少しでも、その祈りが伝われば」と思いを語った。

オーディションで戦争孤児役に抜てきされた塚尾にとって、本作は「ラーゲリより愛を込めて」に続く映画出演となり、「僕は塚本監督や、『ほかげ』の皆さんが大好きです。撮影は去年の夏休みで、すごく暑かったんですけど、みんなでアイスを食べながら撮影ができて、楽しかったです」と現場の様子を回想。塚本監督は「現場に自覚をもって臨んでくれた。このようなシチュエーションの映画ですが、いつも明るくいてくれて、救いになった」と感謝を示した。

また、復員した若い兵士役の河野は、「無茶な減量をしていたとき、メールで気づかってくれたし、現場でも集中しやすい環境を作ってくださった」と塚本監督の人柄を語った。俳優業に加えて、映画監督としても活動しており「現場で吸収できること、学べることがあるんじゃないかと思っていたが、そんな余裕はなくて」と振り返り、「塚本監督は照明ひとつにしても、細部にこだわりがあり、時間をかけてシーンを撮る印象。それがすばらしい映画を生み出し続けている理由なんだと思う」と敬意を表していた。

本作は第80回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門に出品され、優れたアジア映画に贈られるNETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を日本人として初受賞。第48回トロント国際映画祭センターピース部門にも正式出品された。塚本監督作が、東京国際映画祭で上映されるのは、第28回で『野火』がJapan Now部門に出品されて以来、8年ぶり2度目となる。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。『ほかげ』は、11月25日から東京・渋谷のユーロスペースほか全国で公開される。
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