2023.10.25 [インタビュー]
「私なりのやり方で」ーー東京国際映画祭公式インタビュー『ゴンドラ』ファイト・ヘルマー監督、ニニ・ソセリア(俳優)

東京国際映画祭公式インタビュー:
コンペティション
ゴンドラ
ファイト・ヘルマー(監督/脚本/プロデューサー)、ニニ・ソセリア(俳優)
 
公式インタビュー

©2023 TIFF

 
2018年の東京国際映画祭で上映された『ブラ物語』が好評を博し、『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』の邦題で劇場公開されたファイト・ヘルマー監督。前作と同様、東ヨーロッパのジョージアで撮影を行い、台詞を排した『ゴンドラ』は、緩慢に運航するロープウェイの不思議な魅力を湛えた作品。ジョージアの山間の景観と空を走る年代物の赤いゴンドラの美しさ。ふたりの女性乗務員とロープウェイの社長の間で演じられる性的寸劇。ゴンドラに乗る彼女たちと低所に住む住民のファンタジックな交流。ロープウェイを用いてどんな視覚的な物語が作れるのか、楽しみながら探求しているのが愛らしい。10月23日のワールド・プレミア上映から一夜明けた監督と主役のひとり、ニニ・ソセリアさんに話を伺った。
 
――昨晩のワールド・プレミア上映はいかがでしたか。
 
ファイト・ヘルマー監督(以下、ヘルマー監督):これは必要最小限の要素だけで作った真珠のような作品で、雰囲気やイメージというものに、ストーリーと同じくらい比重を置いています。昨晩のワールド・プレミア上映は、観客が好奇心を抱いて観てくれて、現実とはまったく異なる映画の世界に没頭してくれました。上映後のQ&Aでは、観客が作品と熱心な繋がりを持ってくださり、嬉しくなりました。
どこでワールド・プレミアを行うかは作り手にとって非常に重要なことで、東京の観客は感情移入して映画を観てくれます。私は最適な場所を選んだと感じました。
 
ニニ・ソセリア(以下、ニニ):昨晩の上映で、私は初めて作品を見て感動しました。観客が優しく見守ってくださったのが嬉しくて、Q&Aでは映画がちゃんと伝わっているという実感を持つことができました。
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――長閑な山間を走る2台のゴンドラが映画的な魅力を放っています。
 
ヘルマー監督:ゴンドラがまさにこの映画の主人公と言っていいでしょう。夜になると照明が変わって、昼間と違うムードになる。おまけに「衣替え」もします(笑)。ゴンドラが飛行機や船、バス、ロケットなどに装飾される度に、作品の雰囲気も変化していきます。こういったゴンドラの「着せ替え」をいかに実現させるのか、美術スタッフは挑戦してくれました。ゴンドラがデフォルメされることで、ストーリーも進展していくのです。
ジョージアのあのロープウェイはソ連時代に作られたもので、かなり老朽化しています。部品がないから壊れたらもう修理できないと思います。ふたつの頂きを結んでいるけれど、それはさほど重要な土地でなく、どうして作られたのか今や誰も知らない。どこか神秘的なんです。
 
――日本ではこうした小さなゴンドラに乗務員はいませんが、この土地はいるんでしょうか。
 
ヘルマー監督:乗務員はいますが男性で、彼女みたいな美女じゃありません(笑)。ほかにも現実との違いを挙げておくと、実際のゴンドラは地元民は無料で、観光客だけがお金を払う仕組みになっています。また、主人公のふたりが持つ現金収納のバッグは私がベルリンから持参した小道具で、実際は使われていないものです。バッグを持たせ、スチュワーデスのような制服を着せることで、彼女たちをファンタジーの中の人物のようにキャラクタライズしたんです。
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――ふたりの女性を主人公にしようと思った理由は?
 
ヘルマー監督:脚本はもともと男女の設定でしたが、キャスティング用に送られた俳優たちのビデオを見るなかで、1番いいと思えたのがこのふたりでした。それで女性ふたりでいくことに決めましたが、そうすることでストーリーは大きく変わり、プロジェクトにも波紋が生じました。ふたりの女性の話にすると製作補に話したら、それだとロケ地の所有者の許可が下りないと言われたんです。女性の間にロマンスが生まれるというのは、ジョージアの田舎の人々には理解されないから、親友同士としておいた方がいい。そして、ロープウェイの社長が彼女たちに注ぐ欲望も伏せておいた方がよいと。そうして撮影の許可を取り、ゴンドラ内でニニが制服を脱ぐシーンも所有者の存在を気にかけながら撮影しました。
 
――ニニさんは映画初主演が台詞のない本作となりますね。抜擢されていかがでしたか。
 
ニニ:最初はちょっと躊躇しました。怖い気持ちもあったし、会話が全くないので不思議な感じがありました。でも監督が明快な指示を出してくれて、演じていくうちに難しさを感じることはなくなりました。
 
――昨日の上映を見てどう思いましたか。
 
ニニ:すごく印象深い作品で、音楽と色遣いに私は魅了されました。自分がこの映画の一部であることをとても嬉しく思っています。
 
――監督はファンタジーの世界にシンパシーをお持ちですが、メルヘンには興味がない?
 
ヘルマー監督:私の映画に怪物は登場しないし、奇跡も起こらない。絶対に起こり得ないことは描かないというのが私の鉄則なので、メルヘンやおとぎ話の要素はありません。車椅子の男をゴンドラにぶら下げて運行するなんて、現実にはまず見ないことですが、私が描いたようにこれはやろうと思えばできることです。このように、実際は目にしたことがないけどあり得る事柄を描きたいと私は思っているんです。
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――日本では『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』が劇場公開され、監督は台詞を排した特異なスタイルの作風で知られています。
 
ヘルマー監督:私は必ずしも会話のない作品だけ作っているのではありません。いま作っているのは子ども向けの実写映画で、これには会話が沢山あります。アキコという猿が登場するお話です。また5年から10年間隔でドキュメンタリーも製作していて、かつてハリウッドのキャスティング・システムをめぐるもの(”Behind the Couch”)や、NHKで日本に住む外国人のドキュメンタリー(”Strangers in Tokyo”)を作っています。
ですから、会話がない映画だけ作りたいわけではないのですが、最近そういうものを作る人が非常に少ない。私はみんなと同じことはしたくないので、マイ・ウェイ――私なりのやり方で映画を作っているんです。
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2023年10月24日
取材構成:赤塚成人(四月社)/TIFF Times編集
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