2023.10.25 [イベントレポート]
三吉彩花主演作『ナックルガール』から紐解く“日韓の映画製作の未来” 合作映画で重視すべきポイントは?
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『ナックルガール』チームが登壇!

第36回東京国際映画祭のスペシャルトークセッション「日韓の映画制作の未来 シンポジウム」が10月25日、帝国ホテルで行われ、Amazon Original映画『ナックルガール』の三吉彩花(キャスト)、チャン(監督)、キム・トーマス(プロデューサー)、石坂拓郎(撮影監督)が出席した。

女子ボクサー・橘蘭(三吉)が妹の失踪の真実を知るため、巨大犯罪組織に立ち向かうアクション大作。韓国の同名人気コミックを原作に、日本のAmazonスタジオと韓国のクロスピクチャーズが共同で製作した。キム氏は「原作は韓国で非常に有名な作品。どの国のストーリーテリングでも可能な物語だと感じていました。企画を進めるなかで、Amazonプライムが“女性主人公のアクション映画”という話を探していると知り、このプロジェクトを進めることにしました」と企画の経緯を明かす。

本作のポイントは「日韓共同製作」。石坂氏は「国をまたいで2つのグループが動く場合、まずは“当たり前”を忘れていく作業から始めないといけません。互いにとって“何が常識なのか”ということを聞き合う時間が必要。チャン監督は、こちらの事情を全て聞き入れてくれる人だということが、すぐに伝わってきました」と振り返る。すると、三吉がこのように補足した。

三吉「今回はチャン監督をはじめ、撮影監督の石坂さん、美術監督やアクション監督など、各プロフェッショナルが集結してくださいました。現場では常にコミュニケーションが行われる。時に意見がぶつかることもありますが、必ず1シーン、1カットを良いクオリティのものにしていくために、皆で話し合っていました。フェアな立場で意見交換ができていたのは、皆さんのおかげです」

チャン監督は、日本と韓国の映画製作の違いや“共同製作”によって生まれるメリットを紐解く。

チャン監督「これはナーバスな可能性を秘めたものでもありますが、ともに研究していく余地のあるもの。例えば、日本人スタッフは非常に慎重で細やか。その誠実さに感動を覚えました。一方で、現場で不慮の事態が起きた時の対応力は、韓国人スタッフに強みがあると思います。今回の作業を通じて、大きな可能性を感じました。韓国の人々が持っている“推進力”、日本の皆さんが持っている“細やかで精巧な物作りに対する姿勢”。これらが上手く混ぜ合わされば、ハリウッドを超える、優れた合作映画が多く生まれると思います」

さらに“合作映画”において、最も労力を割くべきポイントは「シナリオ開発」にあるという。

チャン監督「これまでの歴史を振り返ってみても、合作映画というのは意外と多く作られています。例えば『レオン』もそうです。韓国人が見ても、アメリカ人やインド人が見ても、ユニバーサルにとらえることができる――そんなシナリオであれば、今後も合作映画はますます製作される可能性があると思います。とりわけアクションやラブコメ、ファンタジーは、どの国の人が見ても“受け止めやすい”“吸収しやすい”映画だと思います」

そのうえで、石坂氏は『ナックルガール』のような日本と韓国がタッグを組んだ際に生じる“メリット”について解説する。「今回はポストカラーグレーディングまで韓国でやらせていただきました。そこで感じたのは「(韓国が)すぐに行ける場所」でもあるということ。日本国内を移動するような感覚で行けてしまう。異文化、そして感覚が似通っているところの両方がある。また、異なる部分で、互いに学べる部分があります。“当たり前”になってしまうことが一番危険。新鮮なものが常に入り続ける――大変なので避けがちな人いるとは思いますが、継続していくとノウハウがたまっていく。その結果、もっとやりやすくなっていくのではないかと思いました」

撮影現場では、時に衝突も生まれる。チャン監督は、そのことを“葛藤”と言い表した。解決するためにとった手法は“対話”だったようだ。

チャン監督「例えば、彩花さんとも少しの間“葛藤”が生じたことがありました。特に大きな問題があったというわけではありませんが、撮影中は身体的にも精神的にもハードな状況。その中で生じる細やかな“葛藤”。そんな時の解決策は至ってシンプル。彩花さんにサムギョプサルを御馳走すると、それはすぐに解決したんです(笑)。サムギョプサルを食べながら“対話”をしていると、どんなことを考えているのか、何に対して辛い思いや不満を抱いているのかということを知ることができました」。

三吉「監督と私を結び付けていたのは、まさにサムギョプサルなんです。「サムギョプサルガール」にタイトルを変えてもいいくらい(笑)」

また、三吉が『ナックルガール』の魅力について、自らの言葉で語るひと幕も。手に汗握りながら紡いだ言葉に、場内からは大きな拍手が起こっていた。

三吉「完成した作品を見て、初めて感じたのは“誰ひとり完璧な人がいない”ということ。それがこの映画の特色かなと。主人公の蘭を筆頭に、さまざまな部分に感情移入をしていただけると思いますが、他の登場人物にも“人間味”あふれるヒストリーが描かれています。それが感情に色濃く出ていることで、誰もがそれぞれのキャラクターに寄り添うことができるんじゃないかと感じました」

ナックルガール』は、11月2日から配信開始。第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催される。
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