2023.10.28 [イベントレポート]
「この映画製作の旅路はとても長いものでした」10/27(金)Q&A:『ロシナンテ』

ロシナンテ

©2023 TIFF 左からデニズ・イェシルギュン プロデューサー、ファティヒ・ソンメズさん(俳優)、バラン・ギュンドゥズアルプ監督

 
10/27(金) アジアの未来『ロシナンテ』上映後に、バラン・ギュンドゥズアルプ監督ファティヒ・ソンメズさん(俳優)、デニズ・イェシルギュンさん(プロデューサー/脚本)をお迎えし、Q&Aが行われました。
⇒作品詳細
 
司会:石坂健治シニアプログラマー(以下、石坂SP):ゲストのみなさん、ようこそお越しくださいました。お父さん役のソンメズさん、髭がなくなっています。なんと空港から直行していただきました。
 
バラン・ギュンドゥズアルプ監督(以下、監督):皆さん、こんにちは。ご来場ありがとうございました。今回、このようにワールドプレミアを東京で行うことができました。とても来たかったです。この映画製作の旅路はとても長いものでした。2020年にトルコの文化観光省のサポートを得たものの、パンデミックによるロックダウンもあって2年が経ち、その間に、シナリオを見直して、2022年やっと撮影に入りました。そして、1年後にはここに立っております。ありがとうございました。
 
ファティヒ・ソンメズさん(以下、ファティヒさん):監督がおっしゃったとおりですが、この映画はとても長い時間がかかりました。2017年に始まって、このようなストーリーを作り上げました。私たち自身も製作過程で、さまざまなことを試しました。そして、結果としてやり遂げました。いろいろな人がサポートしてくださり、重要な長編映画が完成しました。ありがとうございます。
 
デニズ・イェシルギュンさん(以下、デニズさん):こんにちは、ご来場ありがとうございます。とても嬉しく、楽しい時となりました。この『ロシナンテ』の脚本を書くチャンスに恵まれ、さらにプロデュースするチャンスにも恵まれました。バランさんと一緒に脚本を書きましたが、彼が話してくれたストーリー、つまり彼の思い出や彼が経験したこと、そうしたことをまとめました。とても楽しかったです。また、現場での撮影もとても楽しかったです。そして、映画祭というところもまた別の楽しさがあります。あらゆる段階で、皆さんと一緒にいろんなことを学んでいます。そして、今、私たちはこの地点に到達しました。皆さんも、私たちの映画製作の旅路の一部となってくださっています。これはとても嬉しいことです。東京に来ることができ、本当にありがとうございます。
 
Q:監督への質問です。この作品では、家の中で地面に魚がいるなど、ファンタジーのような場面が出てくるのですが、影響を受けた作品はありますでしょうか?どのような発想でこうしたファンタジーの場面ができたのか教えてください。
 
監督:ありがとうございました。特にその場面では、シナリオ段階でも研究しました。そして、撮影現場でも、プロダクトデザインの方と非常に密に仕事をいたしました。影響を受けた箇所はいろいろあります。しかし、それ以上に、ここでは子供の意識下に降りていくことに努めました。家という居住する場所については、彼らはどこに行くかもわからない危機的な状況にあります。いつも家の中は荷づくりされていますが、どこに引っ越し先があるかもわからない状況です。家族全員が沈み込んでしまうような、窒息してしまうような、そういった状況であるというメタファーをここで形成しました。子供が魚のサンドイッチを食べている場面がありますが、そこでも気づいていただければと思うのですが、魚のサンドイッチを食べることを子供はためらって、その場から逃げようとしていましたね。それから、映画の最初のところに水槽があり3匹の魚がいました。これはまさしく家族を象徴しています。3匹寄り添っているという関係性を作り出し、そのように表現したのです。経済危機があり、経済が破滅的な状況で、水の中でなんとか残ろうとしているのですが、水の底に引きずりこまれてしまうような、そうした感じですね。
 
石坂SP:ご質問にありました、影響を受けた作品はどうでしょうか?
 
監督:ずばり申し上げまして、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『自転車泥棒』(48)ですね。ヴィットリオ・デ・シーカ監督が映画を作った時期の状況がとても似ていると思いました。トルコだけではなく、世界中がそうだったと思います。というのも、第2次世界大戦が終わった後は、(自分の)両親の世代よりも低い生活水準を強いられていました。第2次世界大戦が終わった後に、普通の人々の日常生活がどういうものであるかということが描かれたイタリアのリアリティ映画ですね。どのように描かれているかということ、そういうところに影響を受けたのです。(この作品では)イスタンブールで、バイク・タクシーをやっていますが、必死に生活すること、生きることは闘いであることがやはり感じられました。私たちも似ていて、同じようなものだと、『自転車泥棒』から学びました。お気づきになったかもしれませんけれども、その他の場面でも、他の映画から影響を受けているところがあります。たとえば、お墓参りに行く場面は、アッバス・キアロスタミ監督の『クローズ・アップ』(90)を参考にしています。
 
Q:バイクの名前も、タイトルもですが、「ドン・キホーテ」を想起させます。この作品にはそうしたところからの着想もあったのでしょうか?
 
監督:それについては、いろいろなところから着想を得ました。私もそうですが、ファティヒさんもそうです。実際にバイクに乗って、いろいろ試してみました。いろいろな人を見ましたし、いろいろな話をしました。それをデニズさんに話して、一緒に構想を練って、作り上げていった役柄です。そのほか、ご指摘の「ドン・キホーテ」のロシナンテは、コンテキストとしてよい発想源になりました。新しいドン・キホーテとなって頑張る姿ですかね。それから、アメリカの小説家で、アーシュラ・K・ル=グウィンの『所有せざる人々』という本からも影響を受けました。
 
石坂SP:デニズさんにお伺いします。お父さんのキャラクターですが、仕事がなくて、イライラしていますが、料理はきっちりしていて、がんばっている面もあります。どのように役作りをされたのか教えてください。
 
デニズさん:キャラクターは、私たちがバランスをとるということを考えた結果です。これはすべての男性についていえること、特にトルコ男性はそうなのですが、男性というものはどういうものなのかということ、そこがやはり反映されていることになります。男性というのは、どこかイライラして、家父長主義的(パターナリズム)であり、男性中心社会にいるということ。こうしたものの中でバランスをとるということをしました。役柄ではいつもイライラして、何度か(感情を)爆発していましたが、それでも妻を助けています。いろいろなことがあるにもかかわらず、けっして終わることのない愛情があります。こうしたバランスをとるという作業はとても楽しく、正しいお芝居だったと思います。
 
Q:コロナもあって今に至るということですが、作品に関わった時間の長さという点で、何か変わったことや悩んだことがあればお聞かせください。
 
ファティヒさん:2017年にストーリーを作り始めましたが、2020年にトルコ文化観光省のサポートを得ることができると、そのあとすぐにパンデミックが始まり、そこで再び作業をすることになり、ロックダウンもあったので長い待機時間になりました。さらに撮影期間も伸びてしまいました。しかし、この時間が逆にシナリオを見直すという活用期間になりました。20を超えるドラフトを作成し、それぞれの役柄についてよりフォーカスすることできました。特に各人の関係性にフォーカスし、最終的には作品の全体性についてフォーカスすることができ、これにより作品全体がひとつの精製された状態になったと言えると思います。構成、撮影、俳優さんたちとのやり取りを含めて、製作プロジェクトにより深みをもたらすことができました。よくないことと思っていたパンデミックですが、長い待機期間がかえって作品を見直す時間になったと思います。作業するチャンスができました。

新着ニュース
2024.01.24 [更新/お知らせ]
2024.01.23 [更新/お知らせ]
プレミアムパートナー