2023.10.31 [イベントレポート]
湯浅政明監督の作品に共通するのは「音楽と魂の解放の結びつき」 『ルーのうた』の音楽の力とは
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アニメ評論家の藤津亮太氏が湯浅政明監督の作品の魅了を解説

湯浅政明監督のオリジナル劇場アニメ『夜明け告げるルーのうた』が10月31日、第36回東京国際映画祭のアニメーション部門で上映された。同部門のプログラミング・アドバイザーを務めるアニメ評論家の藤津亮太氏が東京・角川シネマ有楽町でのトークショーに臨んだ。

本作は、音楽が趣味の中学生カイと人魚の少女ルーの出会いと別れを描いた。公開当時は子役だった谷花音がルー、俳優の下田翔大がカイの声を務め、主題歌には斉藤和義の名曲「歌うたいのバラッド」が採用された。フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門に出品され、日本映画としては『平成狸合戦ぽんぽこ』以来22年ぶりとなる最高賞のクリスタル賞に輝いた。

藤津氏は、「本作の高い評価、さらに他の作品の高い評価も加わり、湯浅政明監督は次回作が世界で待たれているアニメーション監督のひとり」と紹介。そして、湯浅監督作品に共通する重要なポイントとして音楽と魂の解放の結びつき」を挙げ、いくつかの作品を例に解説した。

「初監督作品の『マインド・ゲーム』は、社会の中で思うように生きられなくなった人々が出てきます。彼らがクジラに飲まれて、クジラのおなかの中で生活せざるを得なくなった時、それが一種の社会の外になったわけです。そこで彼らは、それまで抑圧されていた魂を解放して、自分らしく生きようと決意する。この心の転換シーンで音楽とダンスが非常に印象的に使われていました」

さらに、『夜明け告げるルーのうた』も、カイという心を閉ざしている中学生が、純真な心の持ち主であるルーと出会い、最後は歌を通じて自分の心を解放していく様子が描かれています」と説明。2022年に公開された『犬王』でも、「自分らしくあるために歌い踊る2人組が描かれた」と振り返った。

そのうえで、「湯浅監督の作品のなかでは、魂を解放していくこと、自分らしく生きるということと、音楽は深く結びついている」と説明。『ルーのうた』をご覧いただければわかるとおり、音楽は人間の心の深い部分に作用して、体を自然と動かすものとして描かれています。『ルーのうた』のなかでは、体が自然と動き出してしまうということを繰り返し描いており、それが人間と人魚の間にある壁を取り払う力になっています。英語のタイトルが『Lu Over the Wall』となっているのは、本作における音楽の力をうまく反映したタイトルだと言えます」とまとめた。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
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