原恵一監督
第36回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月30日、『
かがみの孤城』が上映され、会場の東京・角川シネマ有楽町で原恵一監督がトークを行った。
同作は、辻村深月氏による同名小説が原作。学校で居場所をなくして部屋に閉じこもっていた中学1年生のこころは、光る鏡の中に吸いこまれて不思議な城へと招かれる。彼女はどんな願いもかなうという鍵を探すべく、城に集められた6人の中学生たちと行動をともにし、次第に心を通わせていく。昨年12月に劇場公開され興行収入10億円を超えるヒットを記録し、今年5月には新作映像『
かがみの孤城』の前と後」付きで再上映された。
「たくさんのお客さんが来てくれてありがとうございます」と挨拶した原監督は、「僕の映画がヒットしたのは『クレヨンしんちゃん』以来、20年ぶり。何をつくってもヒットしてこなかったが、出資者も喜ぶ作品がつくれて喜んでいます」と淡々と話した。
2010年に原監督が手がけた『カラフル』(原作:森絵都)では中学生による自殺や援助交際が描かれ、『
かがみの孤城』を監督するにあたって「似た題材を描くことにためらいはあった」そうだが、Production I.G会長(当時は社長)の石川光久氏に相談して原作を読んでもらったところ、「原さん、これ絶対にやったほうがいいよ」と勧められ、引き受けることを決断したという。『カラフル』のあとに次の仕事がなかなか決まらなかったときも、原監督は石川氏に相談していて、Production I.G制作で『百日紅 Miss HOKUSAI』をつくることになった経緯がある。
プログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏から、『
かがみの孤城』の製作中に手ごたえを感じた時期を聞かれると、原監督は少し考えてから、『カラフル』をつくっていたときは、意地になってアニメらしい部分をなくしていった。そうしたことを1回やっていたので、『
かがみの孤城』ではキャラクターデザインをふくめて違うアプローチをしてみようと手探りで始めていきました」と振り返りながら、「途中から絵コンテがいい感じで描けるようになった」と話す。製作中に影響が大きかった要素として新型コロナウイルスの感染拡大を挙げ、「外出できず、スタジオにも行けない。初めて自宅で全部絵コンテを描きました。生活する場で描くことに最初は抵抗がありましたが、慣れてくるといいペースで進めることができました」と語った。
最後に原監督は、「この映画で描いているような辛い目にあっている子どもたちというのは今、実際に日本でたくさん増えていて、なかには自殺してしまう子もたくさんいるんですね」と話す。社会問題になっているのにもかかわらず、2022年の小中高生の自殺者数が過去最多の514人で、不登校の小中学生が30万人近くいることを観客に伝えた。
「もうとんでもない数字になっているんですね。現実の世界には“『
かがみの孤城』”はないので、僕らは何かしらそういう子どもたちのことをちゃんと忘れずに、何かできる小さいことをできればいいなと思ってます。で、見た人がやっぱりそういうふうに、なんか自分が“『
かがみの孤城』”みたいな存在に少しでもなれればいいって考えてくれるとうれしいです」
第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
原恵一監督
第36回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月30日、『
かがみの孤城』が上映され、会場の東京・角川シネマ有楽町で原恵一監督がトークを行った。
同作は、辻村深月氏による同名小説が原作。学校で居場所をなくして部屋に閉じこもっていた中学1年生のこころは、光る鏡の中に吸いこまれて不思議な城へと招かれる。彼女はどんな願いもかなうという鍵を探すべく、城に集められた6人の中学生たちと行動をともにし、次第に心を通わせていく。昨年12月に劇場公開され興行収入10億円を超えるヒットを記録し、今年5月には新作映像『
かがみの孤城』の前と後」付きで再上映された。
「たくさんのお客さんが来てくれてありがとうございます」と挨拶した原監督は、「僕の映画がヒットしたのは『クレヨンしんちゃん』以来、20年ぶり。何をつくってもヒットしてこなかったが、出資者も喜ぶ作品がつくれて喜んでいます」と淡々と話した。
2010年に原監督が手がけた『カラフル』(原作:森絵都)では中学生による自殺や援助交際が描かれ、『
かがみの孤城』を監督するにあたって「似た題材を描くことにためらいはあった」そうだが、Production I.G会長(当時は社長)の石川光久氏に相談して原作を読んでもらったところ、「原さん、これ絶対にやったほうがいいよ」と勧められ、引き受けることを決断したという。『カラフル』のあとに次の仕事がなかなか決まらなかったときも、原監督は石川氏に相談していて、Production I.G制作で『百日紅 Miss HOKUSAI』をつくることになった経緯がある。
プログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏から、『
かがみの孤城』の製作中に手ごたえを感じた時期を聞かれると、原監督は少し考えてから、『カラフル』をつくっていたときは、意地になってアニメらしい部分をなくしていった。そうしたことを1回やっていたので、『
かがみの孤城』ではキャラクターデザインをふくめて違うアプローチをしてみようと手探りで始めていきました」と振り返りながら、「途中から絵コンテがいい感じで描けるようになった」と話す。製作中に影響が大きかった要素として新型コロナウイルスの感染拡大を挙げ、「外出できず、スタジオにも行けない。初めて自宅で全部絵コンテを描きました。生活する場で描くことに最初は抵抗がありましたが、慣れてくるといいペースで進めることができました」と語った。
最後に原監督は、「この映画で描いているような辛い目にあっている子どもたちというのは今、実際に日本でたくさん増えていて、なかには自殺してしまう子もたくさんいるんですね」と話す。社会問題になっているのにもかかわらず、2022年の小中高生の自殺者数が過去最多の514人で、不登校の小中学生が30万人近くいることを観客に伝えた。
「もうとんでもない数字になっているんですね。現実の世界には“『
かがみの孤城』”はないので、僕らは何かしらそういう子どもたちのことをちゃんと忘れずに、何かできる小さいことをできればいいなと思ってます。で、見た人がやっぱりそういうふうに、なんか自分が“『
かがみの孤城』”みたいな存在に少しでもなれればいいって考えてくれるとうれしいです」
第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。