2023.10.25 [イベントレポート]
主演女優は高所恐怖症 セリフなし&ロープウェイでの撮影を述懐
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第36回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されている『ゴンドラ』の公式上映が10月25日に行われ、ファイト・ヘルマー監督、主演女優のニニ・ソセリア、アシスタント・ディレクターのケイティ・カパナゼによるQ&Aが実施された。

ジョージアの美しい山中を運行するロープウェイを舞台に、そこで働く2人の女性の関係を、セリフを一切使わずに描き出していく。

セリフを使わない手法は、ヘルマー監督が長編デビュー作『ツバル TUVALU』『ブラ!ブラ!ブラ!胸いっぱいの愛を』などで用いてきた独特のスタイル。狙いについて「シネマのエッセンスはイメージと音響にあると思っています。会話があると、字幕や吹替が必要になったりして、途端に“壁”ができてしまうんです。そうした要素を排除して、イメージだけに焦点を合わせることで、センシュアルなレベルに達することができると思います。ただ、これは観客のみなさんがオープンでないとできないことです。こういう映画が嫌いな人もいるかもしれませんが、好きだというひとは私の友達です」と語り、会場は温かい拍手に包まれる。

ソセリアは「最初に脚本を渡された時、セリフのない作品に参加した経験がないので不思議な感覚でしたが、撮影が始まると、監督の指示もハッキリしていたので難しさはなかったです」と振り返る。

ジョージアでの撮影を支えたカパナゼは「この映画では、2人の女性の“愛”というものが描かれていますが、こうした部分に関して、ジョージアであれ他の国であれ、それを受け入れられないという人々はいますし、そういう意味で大変な部分はありました。今後、ジョージアで公開されるときに人々がどう受け取るのか? 愛は愛であり、寛容性をもって受け止めるべきだと思いますし、そのために戦いたいと思います」と語り、会場は再び拍手に包まれた。

撮影に際して苦労もあったようで、ヘルマー監督は様々なエピソードを披露。「最初に撮影を行なった村では、ロープウェイが1台しかなくて、2台のゴンドラが運航している別の街に赴き、黄色いゴンドラを映画用に赤く塗って、ローアングルから2台のゴンドラを撮影しました。もうひとつのロケ地でも、青いゴンドラを赤く塗り直したんですが、雨が降ると塗装が落ちてしまって、塗り直したり、村の人々にも協力してもらいました。あるロケ地では、ロープウェイの駅が改装されることになっていて、撮り進めていく中でいろんなものが変わって、どんどんモダンになっていくんです(苦笑)。古いままの駅の様子を撮りたかったのですが、いろんな制限が加わって大変でした」と身振り手振りを交えて語る。

ソセリアは撮影での苦労を尋ねられると「実は私、高所恐怖症で…(苦笑)」と告白。ゴンドラ内での撮影は「最初はすごくストレスだったけど、慣れてくると自分の家のように感じたわ」と明かし、会場は笑いに包まれていた。

第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催される。
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