2023.10.03 [イベントレポート]
城定秀夫監督 登壇!日本外国特派員協会 記者会見

10月3日(火)に丸の内にある日本外国特派員協会にて東京国際映画祭と日本外国特派員協会(FCCJ)との共催で会見が実施されました。
ゲストとして、Nippon Cinema Now部門の特集監督であり、デビューから100本以上の作品を手がけ、昨年だけでも『女子高生に殺されたい』『ビリーバーズ』『夜、鳥たちが啼く』など、話題作が公開するなど精力的に良作を生み出している実力派監督である城定秀夫監督が登壇しました。
 
日本外国特派員協会記者会見

©2023 TIFF

 
はじめに、今年の目玉企画として生誕120年を迎える小津安二郎特集企画について紹介しました。
安藤チェアマンにとっては、鎌倉にある同監督のお墓にお参りするほど、最も尊敬する監督の1人であり、小津監督が生まれて120年の今年は日本映画界として盛大にお祝いしたいと考えていると話しました。
さらに、今年のコンペティション部門審査委員長をヴィム・ヴェンダース監督にした理由として、ヴェンダース監督が海外で最も小津安二郎を尊敬する監督であったためで、昨年来日した際に直接依頼をしたところ、その場でOKをしてくれたという話を披露し、小津監督の天国からの指図ではないかといったエピソードを語りました。
 
次に、市山プログラミング・ディレクターにより、ここ1年の日本映画を対象に特に海外に紹介されるべき日本映画という観点から選考された作品を上映するNippon Cinema Now部門において、「映画の職人 城定秀夫という稀有な才能」として今年特集される城定監督作品が紹介されました。
市山PDは、城定監督を特集しようとした決め手として、昨年『ビリーバーズ』を劇場で観たときに「これは面白い」と思い、映画祭で紹介したいと思ったのが最初のきっかけであったと明かしました。その後、WOWOWから小津監督のサイレント映画を現代の監督がリメイクしたドラマの制作が進行中で、TIFFで上映してほしいと話がきたことでますます特集をしようと決心し、更なる運命を感じるような出来事であったと語りました。
 
最後に、城定監督が東京国際映画祭にて特集されることについての気持ちを聞かれ、「信じられない想いで光栄です。ずっと小さい映画が多く、ピンク映画やVシネマ作品という独特ジャンル映画を手掛けてきたので、国際映画祭には無縁だと思っていましたが、今回選んでいただいたことで、少しでも多くの人に知ってもらえる機会をいただけたことが非常に嬉しいです。」と特集上映にあたっての想いを明かしました。
 
日本外国特派員協会記者会見

©2023 TIFF

 


 
その後、登壇者3名に対して、来場者からの質疑応答が行われました。
【質疑応答】
Q.黒沢清監督がかつて「小津安二郎の映画は日本の観客にとっても、まるで外国の映画のようである。それは、今の小津の社会とかけ離れた社会を描いているから」と言っていたが、今日、小津安二郎監督の映画を上映することの重要性を教えてください。
安藤チェアマン:先日、山田洋次監督とお話していた際に、山田洋次監督が「ずっと長い間、小津の映画は面白くないと思っていたが、最近になって、素晴らしさに改めて感銘を受けた」とおっしゃっていました。その後、『父ありき』(42)のサイレントフィルムのリマスターを一緒に鑑賞した際にも、「本当にすごいね。小津さんの作品のすべてがここにある」ともおっしゃっていました。私は、小津作品には「日本人の原点」があると思っています。もっと言えば、日本人だけではなく、世界のユニバーサルな人間の原点があると思っています。人間として素晴らしい作品を制作しているからこそ、ヴェンダース監督も小津監督のことを世界に広げたいと思っているのだと考えます。
 
市山プログラミング・ディレクター:私の初めての小津体験は、大学の時に観た『秋日和』(60)です。感動したではなく、異常な体験をしたという記憶があります。
ストーリーはテレビドラマでやっているようなありがちな話でしたが、宇宙人が会話しているようなスタイルに衝撃を受けました。セリフの言い回しや構図の撮り方など、とにかく異常なものを観たという印象がありました。小津監督の映画は、観た人のこれまでの映画の体験や人生の体験によって色々な見方のできる映画であると思います。また、色々な余白があるので、観た人のその時の体験によって感じ方が変わってくる映画であるとも思います。だからこそ、今回上映することで、新たな発見をしてほしいと思い、プログラムを組みました。
今回の上映作品の中には、最近になってきちんとした映像が発見された作品が2つあります。
1つ目の、『父ありき』は、長らく音声が悪く不完全なプリントしかありませんでしたが、ロシアで保存状態のいいものが発見されたことで、それを最新の技術で復元したものを上映することができることになりました。
2つ目が、『突貫小僧』(29)で、製作会社の松竹に原版がありませんでしたが、家庭用に販売されていたものが30年前に発見されたことをきっかけに、その後も色々なバージョンが発見されたのですが、昨年になり、もっと新しいバージョンが発見されたことでTIFFでも上映することができるようになりました。
 
城定監督:サイレントの小津安二郎は、まだ、いまの小津安二郎の作品ではなく、色んなジャンルの作品をとっており、スタイルのない状態だと思っていました。一般的な小津安二郎作品ではない作品をリメイクすることで悩みましたが、『出来ごころ』(33)に登場する喜八というキャラクターは、寅さんの原型になったとも言われており、現代にもいるであろうキャラクターで普遍的だと感じたこともあり、それを物語にできないかと考えアプローチしました。
私が、小津さんから間接的に影響を受けていることは、古典的な撮影方法を取ることだと思います。
意義を語れているかどうか難しいですが、そういうことではないかと考えています。
 
 
連続ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~ 第一話 出来ごころ』上映後に、城定監督への質疑応答が行われました。
 
<上映後>
【城定秀夫監督 マスコミからの質疑応答】
Q.劇中で赤いやかんがでてきていますが、あれは小津作品へのオマージュでしょうか?
城定監督:鋭い質問ですね。実はそれがWOWOWさんから指定された唯一の縛りでした。今回のリメイクドラマで、シリーズに共通してひとつだけ登場する小道具になっています。
 
Q.実際に小津さんが使っていたものですか?
城定監督:いえ、違います。が、それをもっと早く聞いていればよかったですね。面白くなったと思います。
 
Q.小津映画の持っている日本性と同時に世界的な人間の心に訴えるものというのは何なのか教えてください。
城定監督:私なりの分析ですが、どの国にとっても、子どもを可愛く思わない親はいないですし、普遍的なことだと思います。しかし、愛情表現は国によって違います。日本は非常に奥ゆかしく、アメリカでは毎日「愛している」ときちんと言うという文化があり、日本にはそういう文化がなく、そういう回りくどさを小津監督の作品には感じられるので、それが海外の方にとっては興味深いと思っているのかもしれません。
 


 
【城定秀夫監督 プロフィール】
劇場公開作品やピンク映画・Vシネマなどを含め100タイトルを超える作品を監督し、その情緒豊かな作風に心を掴まれた支持者が増え続ける、現在の邦画界の誇る最高の“職人監督”であり“作家”と称される。『アルプススタンドのはしの方』で第12回TAMA映画祭特別賞、第42回ヨコハマ映画祭と第30回日本映画プロフェッショナル大賞で監督賞を受賞。その後、9本の劇場公開作品が公開されるなど、めざましい活躍を見せている。 
 
本年TIFFのNippon Cinema Now部門の特集監督として、「映画の職人 城定秀夫という稀有な才能」と題し、特集上映を実施。『銀平町シネマブルース』(22)、『ビリーバーズ』(22)、『愛なのに』(21)、『アルプススタンドのはしの方』(19)の4作品を映画祭期間中に英語字幕付きで上映する。さらに、今年の映画祭の目玉企画の一つである、小津安二郎監督の生誕120年記念企画に関連して、TIFFシリーズ部門でも上映される「ドラマW OZU ~小津安二郎が描いた物語~」の一話『出来ごころ』を監督している。

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