監督の温かい人柄を客席とともに偲ぶ
第36回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出されたペマ・ツェテン監督の『
雪豹』が10月29日、丸の内TOEIで上映。本作キャストのジンパ、ション・ズーチー、ツェテン・タシがQ&Aに出席し、観客からの質問に答えた。
チベット・ニューウェーブの先駆者として知られ、今年5月に急逝したペマ・ツェテン監督の最後の作品のひとつとなる本作。チベットの山村におりてきた『
雪豹』が、牧場の羊を襲い殺してしまったことから、その『
雪豹』の処遇をめぐって人々の意見が対立するさまを描き出すドラマだ。
『羊飼いと風船』『轢き殺された羊』などペマ・ツェテン作品の常連俳優として知られるジンバは、本作では大切な羊を殺された怒りで、『
雪豹』を殺すべきだと主張する兄を演じているが、「撮影は2021年の冬に(40日間)行われました。自分もそうなんですが、ペマ・ツェテン監督も寡黙な人で口数が少ないんですよ。でも何作か一緒に仕事をするうちに、監督はこういうものを求めているのかなということがだんだん分かってきた。ただ基本的には現場では指示がなかったので、脚本通り演じていたんです。ただ現場入りしてからは、プライベートのレベルで監督と個別に話をしたり、相談をしたりしていました」と述懐する。
一方、ワン・シュイ役のション・ズーチーが「何年か前に監督が手掛けた『羊飼いと風船』や『轢き殺された羊』といった映画を観ていて、その映画がとても大好きだったんです。機会があれば、ぜひ監督のチームに入って、いろいろな経験を積んで、学ばせていただきたいと思っていたんですけど、なかなかその機会が訪れなかった。だけど今回の『
雪豹』の企画が立ち上がった時にオファーをいただいて。ワン・シュイの役はぜひやりたかったですし、監督も認めてくれた。自分にとっても今回の出演はラッキーなチャンスでした」と語ると、『
雪豹』法師役のツェテン・タシも「2019年にペマ・ツェテン監督のドキュメンタリー映画に出演したことがあったんですけど、それから2年ほどたって監督から映画の脚本をいただいて。これが本当にすばらしくて、何度も何度も読み返したんです。いざ撮影が始まると皆さんが家族のような関係で撮影に取り組むことができて。監督はいろいろと気遣いをしてくれて面倒見がいいんです。ひとりひとりのことを最後まで気にかけてくれた監督でした。いち俳優としてだけでなく、人間としても多くのことを学びました」と打ち明けた。
本作がツェテン監督最後の作品のひとつということで、会場には彼の映画のファンが多く来場。会場の女性客からは「最後の作品を見ることができて感動しています。監督の思い出話を教えてください」というリクエストが送られるひと幕も。
ジンバが「この映画の脚本をもらった時は、別の映画を撮影していたところだったのですが、脚本を読んだ時はすごくいい映画になるだろうと期待していました。監督のチームに入ってからは、演じる役柄について一生懸命考えて。監督に6つほど提案をさせていただいたんですが、「とにかくやってみよう」と言ってくれて。そのほとんどを採用してもらいました。このようにして監督と役柄を話し合いましたね」と振り返ると、ズーチーも「とても感動したことがありました。自分の役は、映画の中で民族衣装を着る機会はなかったんですが、隣の彼(ツェテン・タシ)が着ている衣装がすてきだなと思って、監督に自分も着てみたいなというようなことを言っていたんです。もちろん話はそこで終わって。そこからしばらくしてクランクアップを迎えたわけですが、その時に監督が自分のために民族衣装を用意してくれたんです。それを着て一緒に記念撮影をしたことを思い出します」と、それぞれにツェテン監督の温かい人柄を伝えた。
そしてツェテン・タシも「実は自分は僧侶になりたいという望みがあって、それを監督に話したことがあったんですが、それでこういう僧侶の役柄を与えてくれたのかなと思いました。そしてこの役に取り組む中で、僧侶になるというのはこういうことなのかなと、追体験できた気がします。そういう意味でも監督には感謝しています」と偲んだ。
第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。
監督の温かい人柄を客席とともに偲ぶ
第36回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出されたペマ・ツェテン監督の『
雪豹』が10月29日、丸の内TOEIで上映。本作キャストのジンパ、ション・ズーチー、ツェテン・タシがQ&Aに出席し、観客からの質問に答えた。
チベット・ニューウェーブの先駆者として知られ、今年5月に急逝したペマ・ツェテン監督の最後の作品のひとつとなる本作。チベットの山村におりてきた『
雪豹』が、牧場の羊を襲い殺してしまったことから、その『
雪豹』の処遇をめぐって人々の意見が対立するさまを描き出すドラマだ。
『羊飼いと風船』『轢き殺された羊』などペマ・ツェテン作品の常連俳優として知られるジンバは、本作では大切な羊を殺された怒りで、『
雪豹』を殺すべきだと主張する兄を演じているが、「撮影は2021年の冬に(40日間)行われました。自分もそうなんですが、ペマ・ツェテン監督も寡黙な人で口数が少ないんですよ。でも何作か一緒に仕事をするうちに、監督はこういうものを求めているのかなということがだんだん分かってきた。ただ基本的には現場では指示がなかったので、脚本通り演じていたんです。ただ現場入りしてからは、プライベートのレベルで監督と個別に話をしたり、相談をしたりしていました」と述懐する。
一方、ワン・シュイ役のション・ズーチーが「何年か前に監督が手掛けた『羊飼いと風船』や『轢き殺された羊』といった映画を観ていて、その映画がとても大好きだったんです。機会があれば、ぜひ監督のチームに入って、いろいろな経験を積んで、学ばせていただきたいと思っていたんですけど、なかなかその機会が訪れなかった。だけど今回の『
雪豹』の企画が立ち上がった時にオファーをいただいて。ワン・シュイの役はぜひやりたかったですし、監督も認めてくれた。自分にとっても今回の出演はラッキーなチャンスでした」と語ると、『
雪豹』法師役のツェテン・タシも「2019年にペマ・ツェテン監督のドキュメンタリー映画に出演したことがあったんですけど、それから2年ほどたって監督から映画の脚本をいただいて。これが本当にすばらしくて、何度も何度も読み返したんです。いざ撮影が始まると皆さんが家族のような関係で撮影に取り組むことができて。監督はいろいろと気遣いをしてくれて面倒見がいいんです。ひとりひとりのことを最後まで気にかけてくれた監督でした。いち俳優としてだけでなく、人間としても多くのことを学びました」と打ち明けた。
本作がツェテン監督最後の作品のひとつということで、会場には彼の映画のファンが多く来場。会場の女性客からは「最後の作品を見ることができて感動しています。監督の思い出話を教えてください」というリクエストが送られるひと幕も。
ジンバが「この映画の脚本をもらった時は、別の映画を撮影していたところだったのですが、脚本を読んだ時はすごくいい映画になるだろうと期待していました。監督のチームに入ってからは、演じる役柄について一生懸命考えて。監督に6つほど提案をさせていただいたんですが、「とにかくやってみよう」と言ってくれて。そのほとんどを採用してもらいました。このようにして監督と役柄を話し合いましたね」と振り返ると、ズーチーも「とても感動したことがありました。自分の役は、映画の中で民族衣装を着る機会はなかったんですが、隣の彼(ツェテン・タシ)が着ている衣装がすてきだなと思って、監督に自分も着てみたいなというようなことを言っていたんです。もちろん話はそこで終わって。そこからしばらくしてクランクアップを迎えたわけですが、その時に監督が自分のために民族衣装を用意してくれたんです。それを着て一緒に記念撮影をしたことを思い出します」と、それぞれにツェテン監督の温かい人柄を伝えた。
そしてツェテン・タシも「実は自分は僧侶になりたいという望みがあって、それを監督に話したことがあったんですが、それでこういう僧侶の役柄を与えてくれたのかなと思いました。そしてこの役に取り組む中で、僧侶になるというのはこういうことなのかなと、追体験できた気がします。そういう意味でも監督には感謝しています」と偲んだ。
第36回東京国際映画祭は、11月1日まで開催。