病床の恩師を囲むかつての教え子たちが青春時代を回想する。1994年、3人の男子高校生、チャン・ジェンハン、チェン・シャン、ホー・シャンは厳格な指導で知られる予備校に通う。そこで風変わりな英語講師ミッキーと出会い、彼に導かれてゲイ・コミュニティーとの親交を深めるなかで、3人の人生は大きく変わっていく。TVドラマ「流星花園～花より男子～」（01）や映画『おばあちゃんの夢中恋人』（13）で俳優として知られるラン・ジェンロンは、監督2本目となる本作で、自らの恩師であり、のちにドキュメンタリー監督となり2018年に51歳で没したミッキー・チェン（陳俊志）をモデルに据え、亡き恩師に捧げた。台北映画祭2023閉幕作。ちなみにミッキー・チェンの監督作はTIFF2005で『非婚という名の家』（05）、山形国際ドキュメンタリー映画祭1999で『美麗少年』（98）が上映されている。

マフィアの一員であるアータイは、正体不明の追っ手から逃れてアーフェンが働く美容院にたどり着く。アーフェンの助けで身を隠すことに成功したアータイは危機を回避。彼女への感謝を込めて、子分全員を強制的に彼女に整髪させることで恩返しを果たす。一方、アータイと子分たちはボスを殺した犯人を見つけようとしていたが、身内に不審な者がいるため危険に晒されていく。ネット小説家としてスタートし、アジア全域で大ヒットを記録した『あの頃、君を追いかけた』（11）の脚本家・監督として一躍ポストニューシネマ時代の台湾映画の顔となったギデンズ・コーの新作は、笑いと涙の任侠ラブコメディー。ギデンズのTIFFへの登場は『怪怪怪怪物！』（17）以来となる。台北映画祭2023開幕作。

1989年秋。自分たちの理髪店を開く事を夢見る父と息子リャオ・ジエ。貧しさにもめげずふたりでつましく暮らしている。ある日、大金持ちの家主シャに出会ったリャオ・ジエは、彼と交流を深めるうちに不平等な社会の厳しさを知り、次第に自分の置かれた環境に憤りを感じ始める。1990年が間もなくやってくるなか、急激なバブルの影響で理髪店の夢も次第に遠のいていき、父と子の関係も揺らぎ始める。日本から門脇麦も出演している本作は、シャオ・ヤーチュエン監督の長編第4作。シャオ監督はコマーシャル業界で働いたのち、2000年に『ミラー・イメージ』で監督デビュー。長いブランクを経て発表した第2作『台北カフェ・ストーリー』（10）が評判となり、ポストニューシネマ時代を代表する1本と称されている。TIFFへの登場は同作以来となる。

戒厳令解除後の1994年、表現の自由を求めて美術大学で学園紛争が勃発。デモに参加した女子学生チーウェイは、学生運動のリーダーであるクァンに徐々に惹かれ、また数少ない女性メンバーのチンとも仲良くなっていく。権力に対する抗議行動がエスカレートしていくのと並行して、チーウェイ、チン、クァンの三角関係も複雑に燃え上がっていく。チーウェイは芸術創造の自由を希求しながら、自らの欲望の解放にも向き合うことになる。女性監督スー・イーシュエンのデビュー作は、1990年代の学生運動とその中で展開される主人公3人の複雑な恋愛模様を繊細なタッチで描き出している。タレンツ・トーキョー2018など各地の企画マーケットで高い評価を受け、ついに完成となった。2023年台北映画祭で上映。